医療費控除は年末調整では受けられない|10月からの準備チェックリスト
10月から11月にかけて、会社から年末調整の書類が配られます。「今年は通院が多かったから、年末調整で医療費も出せば戻ってくるはず」と考える方は少なくありません。
結論から言うと、医療費控除は年末調整では受けられず、会社員でも自分で確定申告(還付申告)をする必要があります。そのかわり、申告は翌年1月1日から始められ、5年間さかのぼって出すこともできます。年末までにやっておくことは「領収書と記録を集める」「家族分をまとめる」「10万円を超えそうか見積もる」の3つです。
- 医療費控除が年末調整で受けられない理由と、代わりの手続き
- 控除の対象になる金額の計算(10万円の基準と上限)
- 薬代・通院費などの「対象になるもの・ならないもの」
- 10月〜翌年3月の準備チェックリスト(時期別)
- 申告し忘れたときに使える「5年間」のルール
なぜ年末調整では医療費控除を受けられないの?
年末調整は、毎月の給与から天引きされた所得税と、1年間に本来納めるべき所得税との差を、勤務先が精算するしくみです。保険料控除などは会社に書類を出せば反映されますが、医療費控除は年末調整の書類に書く欄がありません。
国税庁の「還付申告」の説明でも、給与所得者が還付申告できる例として「多額の医療費を支出したとき(医療費控除)」が挙げられています(国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」より)。つまり会社員の場合は、年末調整はいつもどおり会社で済ませ、医療費控除だけを自分で申告するという流れになります。
なお、同じ医療費控除でも、確定申告の基本的な手順は「医療費控除で薬代が戻ってくる!確定申告の超基本5ステップ」で詳しく紹介しています。
控除される金額の計算
医療費控除の金額は、次の式で計算します(国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」より)。
- 対象期間:その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費。12月に受診して翌年1月に支払った分は翌年分になります。
- 10万円の基準:総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」が基準になります。
- 家族の分:自分と生計を一にする(家計が同じ)配偶者や親族のために支払った医療費も合算できます。
- 補てんされる金額:民間保険の入院費給付金や、健康保険の高額療養費・出産育児一時金など、医療費を埋め合わせるお金は差し引きます。
高額療養費として後から戻ってきた分を差し引き忘れるのは、よくあるミスです。高額療養費の申請そのものについては高額療養費の申請期限と2年遡及の記事もあわせてご覧ください。
対象になるもの・ならないもの
薬局でよく聞かれるものを中心に、国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」の記載をもとに整理しました。
| 項目 | 扱い | ポイント |
|---|---|---|
| 処方箋による薬代・診察代 | 対象 | 窓口で支払った自己負担額 |
| 市販の風邪薬など | 対象 | 治療や療養のための医薬品であること |
| 通院の電車・バス代 | 対象 | 日付・区間・金額をメモしておく |
| ビタミン剤など予防・健康増進の薬 | 対象外 | 治療目的でないもの |
| タクシー代 | 原則対象外 | 電車やバスが利用できない場合を除く |
| 自家用車のガソリン代・駐車場代 | 対象外 | 通院のためでも含まれない |
| 健康診断の費用 | 原則対象外 | 健診で病気が見つかり治療に進んだ場合などは扱いが異なるため確認を |
市販薬を多く買う人は、医療費控除のかわりに「セルフメディケーション税制」を選べる場合があります(通常の医療費控除との選択制で、両方は同時に使えません。国税庁 No.1120より)。違いはセルフメディケーション税制の記事で解説しています。
時期別・医療費控除の準備チェックリスト
年末調整の時期をきっかけに、次の流れで準備しておくと、翌年の申告がスムーズです。
- 年末調整の書類は通常どおり会社に提出する(医療費は書かない)
- 家族全員分の病院・薬局の領収書を1か所に集める
- 通院の電車・バス代を、日付・行き先・金額でメモしておく
- 保険の入院給付金や高額療養費など、戻ってきたお金も記録する
- 「支払った日」で年が決まる。1〜12月分の合計をざっと計算する
- 補てん分を差し引いて、10万円(所得が低い人は総所得金額等の5%)を超えそうか確認する
- 市販薬の購入が多い人は、セルフメディケーション税制とどちらが有利か比べる
- 還付申告は、翌年1月1日から提出できる(国税庁 No.2030)
- 確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付する。健康保険の「医療費通知」を使うと明細の記載を簡略化できる(国税庁 No.1120)
- 領収書は、確定申告期限等から5年間は提示・提出を求められることがあるため保管しておく(国税庁 No.1120)
申告を忘れていたら:5年間さかのぼれる
還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」より)。「去年も一昨年も医療費が多かったのに申告していなかった」という場合でも、5年以内の年の分であれば、今から申告できる可能性があります。領収書や医療費通知が残っているか、まず確認してみてください。
ふるさと納税をしている人は、医療費控除の申告とあわせて手続きを確認しておくと安心です。注意点はふるさと納税と医療費控除の記事で解説しています。
- ある費用が対象になるか迷うとき(健診後の治療、介護関係の費用など)は、税務署の電話相談や税理士に確認する
- 処方薬と市販薬のどちらで治療しているか、領収書の見方がわからないときは、薬局で薬剤師に相談する
- 医療費が高くて家計が苦しいときは、医療費控除だけでなく、高額療養費や各種助成制度も使えないか、加入している健康保険や市区町村の窓口に相談する
- 医療費控除は年末調整では受けられない。会社員も確定申告(還付申告)が必要
- 控除額=(支払った医療費−補てん額)−10万円(所得200万円未満は総所得金額等の5%)、上限200万円
- 1月1日〜12月31日に「支払った」家族分の医療費を合算できる
- 年内は領収書・交通費メモ・補てん額の記録をそろえておく
- 還付申告は翌年1月1日から5年間提出でき、領収書は5年間保管
参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(2026年10月閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」(2026年10月閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」(2026年10月閲覧)