「3か月続けて上限に達したのに、4か月目から安くなった」高額療養費"多数回該当"のしくみをよくあるケースで薬剤師が解説
「夫が3か月連続で入院を続け、毎月窓口での自己負担が上限に達していました。先月、病院の医事課の方から"来月から多数回該当になりますよ"と言われたのですが、どういう意味かよくわかりませんでした」——Q&Aサイトや薬局窓口でこうした声をよく見かけます。
- 「多数回該当」とは何か(4回目から上限がさらに下がるしくみ)
- 通常の高額療養費との上限額の違い(所得区分ごとの例)
- 「3回」の数え方とよくある勘違い
- 令和8年8月からの制度改正(年間上限額の新設)
- 国保と被用者保険で手続きが違う点
よくあるケース:3か月連続で上限だったのに、4か月目から請求が急に安くなった
たとえばこのようなケースがあります。
変形性股関節症の手術とリハビリのため長期入院が必要になったMさん。限度額適用認定証を提示して毎月の窓口負担を上限額(区分ウで約87,430円)に抑えていました。
入院4か月目の請求書を見ると44,400円と書かれており、「先月と同じ治療をしているのになぜ安くなったの?」と薬局窓口に持ち込まれました。医事課の紙に「多数回該当適用」とあったものの意味が分からなかったとのことでした。
実際には、3か月連続で高額療養費が適用された翌月(4か月目)から「多数回該当」の上限額に切り替わっていたのでした。
多数回該当とは何か
高額療養費制度では、同じ月の自己負担が自己負担上限額を超えた場合に超過分が還付されます。この制度に「多数回該当」と呼ばれる特例があります。
直近12か月(1年間)以内に3回以上高額療養費が支給された(上限額に達した)場合、4回目以降の月はさらに低い上限額が適用されます。医療費が高い状態が長引いている方の負担を、より一段軽くするためのしくみです。
| 所得区分(70歳未満の目安) | 通常の上限額(月) | 多数回該当の上限額(月) |
|---|---|---|
| 区分ア(標準報酬月額83万円以上) | 約254,180円+α | 140,100円 |
| 区分イ(標準報酬月額53〜79万円) | 約167,400円+α | 93,000円 |
| 区分ウ(標準報酬月額28〜50万円) | 約80,100円+α | 44,400円 |
| 区分エ(標準報酬月額26万円未満) | 57,600円 | 44,400円 |
| 区分オ(住民税非課税) | 35,400円 | 24,600円 |
「3回」の数え方とよくある疑問
多数回該当の「3回」は、直近12か月以内に高額療養費が支給された月が3か月あることで判定されます。連続していなくてもかまいません。
令和8年8月からの改正:月額上限の見直し+年間上限の新設
2026年(令和8年)8月診療分から、高額療養費制度に大きな改正が加わりました。
- 月額の自己負担上限額の引き上げ:所得区分ごとの月額上限が見直されました(物価・医療費水準の変化を反映)
- 年間上限額の新設:同じ世帯で同じ年度(8月〜翌7月)に支払った自己負担の合計が一定額を超えた場合にも還付を受けられる「年間上限」が導入されました
月ごとの多数回該当に加え、年単位でも上限が設定される形になったため、長期にわたって高額な治療が必要な方にとっては保障がさらに手厚くなっています。詳細な金額は加入している健保・市区町村の窓口でご確認ください。
- 多数回該当=直近12か月に3回高額療養費が支給された月がある場合、4回目以降は上限がさらに低くなる特例
- 区分ウなら月の上限が約80,100円+αから44,400円へと大幅に下がる(区分オは35,400円→24,600円)
- 3回は連続でなくてもよい。12か月以内に3回あれば対象
- 協会けんぽ・健保組合は申請不要で自動適用。国保は市区町村に確認
- 令和8年8月からは月額上限の改定+年間上限も新設。自己負担額は最新情報を確認
- 通知書・明細書は捨てずに保管しておくと制度の把握に役立つ
「長期入院が続くと医療費がいくらになるのか心配」という方は、多数回該当のしくみを知っておくと安心です。健保・市区町村窓口のほか、かかりつけ薬局の薬剤師にも気軽に相談してみてください。