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「医療費も介護費も毎月大変…」高額医療・高額介護合算療養費制度のよくあるケースを薬剤師が解説

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尾崎 拓也(薬剤師・調剤薬局経営者)が執筆・監修
和歌山県内で調剤薬局を経営。本記事は現役薬剤師としての実務経験と公的資料に基づいています。 プロフィールはこちら

「高額療養費は毎月申請しているし、介護の上限額管理もしている——でも、医療費と介護費をまとめて合算できる制度があるとは、お知らせが届くまで全然知りませんでした」——家族の介護に関わる方が薬局の窓口でよく話してくださるエピソードです。今回は、医療保険と介護保険の自己負担を年間で合算して上限を設ける「高額医療・高額介護合算療養費制度」について、よくあるケースをもとに薬剤師が解説します。

※ この事例は、薬局でよくあるケースをもとに再構成した一般的な例であり、特定の実話ではありません。制度の詳細や申請については、市区町村の窓口・加入する保険者にご確認ください(2026年8月時点の情報をもとにしています)。
📋 この記事でわかること
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度とはどんな制度か
  • 対象となる自己負担・合算できる費用の範囲
  • 年間自己負担限度額(年齢・所得区分別)
  • 申請の流れと通知が届く時期
  • 高額療養費・高額介護サービス費との違いと使い分け

よくあるケース:高額療養費も高額介護サービス費も使っているのに、さらに合算できると知らなかった

田中さん(76歳・男性)は、慢性心不全で月2回の通院を続けており、降圧薬・利尿薬・血液をさらさらにする薬など計8種類を処方されています。また、4年前に要介護2の認定を受け、週3回のデイサービスと月2回の訪問介護を利用しています。

毎月の自己負担額は、医療費が1割負担で約12,000〜16,000円、介護費が1割負担で約20,000〜25,000円。「高額介護サービス費」(月の上限額を超えた分が払い戻される制度)は市区町村から案内が届いていて活用していましたが、月の上限44,400円(一般区分)を単独では超えていなかったため、実際に払い戻しを受けたことはありませんでした。

ある年の8月末、市区町村から1枚の通知が届きました。「高額医療合算介護(予防)サービス費支給申請書のご案内」という文書で、申請すれば合算療養費が受け取れると書いてありました。計算してみると、前年8月〜今年7月の1年間の医療費自己負担と介護費自己負担を合算した額が年間限度額56万円(一般区分)を超えており、約3万円の払い戻しが受けられることがわかりました。

何が起きていたか——「医療」と「介護」は制度が分かれているが、合算して守る制度もある

日本の公的負担軽減制度には大きく3つの段階があります。

  1. 高額療養費制度(医療保険):1か月の医療費自己負担に上限を設ける(月単位)
  2. 高額介護サービス費(介護保険):1か月の介護費自己負担に上限を設ける(月単位)
  3. 高額医療・高額介護合算療養費制度:①と②を1年間(8月〜翌7月)合算してさらに上限を設ける(年単位)

つまり①②を使っても残った自己負担を年間単位で合算し、さらに限度額を超えた分が③で払い戻されるという仕組みです。田中さんのケースでは、月々の医療費・介護費はそれぞれ①②の月上限を超えていなかったため①②では払い戻しがなかったものの、1年間合計で③の年間限度額56万円を超えていたため合算療養費が受け取れたのです。

💡 ポイント:①②の「払い戻し後の残額」を合算する

高額医療・高額介護合算療養費では、①高額療養費・②高額介護サービス費によってすでに払い戻しされた後の「実際に自己負担した残額」を合算して計算します。月々の上限に引っかかっていなかった方でも、年間合計が年間限度額を超えていれば対象になります。

薬剤師の解説①:高額医療・高額介護合算療養費制度のしくみ

この制度は、同じ世帯内で医療保険と介護保険の両方の自己負担がある場合に、1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)の合計自己負担額が一定の限度額を超えたとき、超えた分を各保険者(医療は健康保険組合など、介護は市区町村)が按分して払い戻すしくみです。

対象となる自己負担の範囲:

  • 医療保険の自己負担(入院・通院・薬局での窓口負担)
  • 介護保険の利用者負担(訪問介護・デイサービス・入所サービス等)
  • 同一世帯に複数の被保険者がいる場合は合算可(ただし同じ医療保険の世帯であること)

対象外となるもの:

  • 食事療養費・生活療養費の標準負担額(入院中の食費など)
  • 差額ベッド代・選定療養費
  • 福祉用具購入・住宅改修費

薬剤師の解説②:年間自己負担限度額(年齢・所得区分別)

対象年齢・所得区分 年間限度額
70歳未満・区分ア(標準報酬月額83万円以上) 212万円
70歳未満・区分イ(標準報酬月額53〜79万円) 141万円
70歳未満・区分ウ(標準報酬月額28〜50万円) 67万円
70歳未満・区分エ(標準報酬月額26万円以下) 60万円
70歳未満・区分オ(低所得者) 34万円
70〜74歳・現役並みIII 212万円
70〜74歳・現役並みII 141万円
70〜74歳・現役並みI 67万円
70〜74歳・一般 56万円
70〜74歳・低所得II 31万円
70〜74歳・低所得I 19万円
75歳以上(後期高齢者)・現役並みIII 212万円
75歳以上・現役並みII 141万円
75歳以上・現役並みI 67万円
75歳以上・一般(2割) 56万円
75歳以上・一般(1割) 56万円
75歳以上・低所得II 31万円
75歳以上・低所得I 19万円
「一般区分」に該当するケースが最も多い
年金収入のみの方・退職後に国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入している方の多くは「一般区分」に当てはまります。田中さんのような76歳・一般区分の方の年間限度額は56万円です。

薬剤師の解説③:申請の流れと注意点

📌 申請の流れ
対象年度終了 (7月31日) 保険者から通知・ 申請書が届く (多くは8〜9月ごろ) 申請書を提出 市区町村・保険者の窓口 (郵送対応可の場合あり) 払い戻し (医療・介護で按分)

申請は自動ではありません。対象期間の終了後、市区町村または後期高齢者医療広域連合(75歳以上の方)から申請書が届きます。申請書に必要事項を記入して提出することで払い戻しが受けられます。申請期限は対象年度末日(7月31日)から2年以内ですが、早めに申請するほど早く払い戻しが受けられます。

  • 通知が届いたら必ず内容を確認し、申請書を返送する(申請しなければ払い戻しを受けられない)
  • 75歳以上の後期高齢者医療制度加入者は後期高齢者医療広域連合または市区町村が窓口
  • 70〜74歳・70歳未満で協会けんぽ・健保組合加入者は加入する医療保険の保険者が窓口
  • 国民健康保険加入者は市区町村の国民健康保険担当窓口が窓口
  • 同一世帯でも別の医療保険に加入している場合は合算できない(例:夫が後期高齢者・妻が国保 → 合算不可)

読者へのアドバイス

  • 医療費と介護費の両方が毎月かかっている場合は、8〜9月ごろに届く通知を見逃さない
  • 月々は高額療養費・高額介護サービス費の上限に達しなくても、年間合算で対象になるケースがある
  • 「申請書が届いた気がするけど捨ててしまった」という場合も、市区町村に問い合わせれば再発行できることが多い
  • 薬局の領収書も医療費合算の対象。1年分の領収書は大切に保管しておく
  • 介護している家族の分も含めて医療費・介護費を整理しておくと、年末の医療費控除と合わせて確認しやすい
📝 まとめ
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度は、医療費と介護費の自己負担を1年間(8月〜翌7月)合算して上限を設ける制度
  • 月々の高額療養費や高額介護サービス費の払い戻しを受けた後の残額が合算の対象
  • 年間限度額は年齢・所得区分によって異なる(一般区分は56万円)
  • 申請は自動ではなく、保険者から届く申請書への記入・提出が必要
  • 通知が届いたら内容を確認し、期限内に申請することが大切
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療・服薬指導の代替となるものではありません。体調や薬について気になることがあれば、医師・薬剤師にご相談ください。制度・金額は公開時点の情報に基づきます。詳しくは利用規約・免責事項をご覧ください。

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