「なぜ病院の窓口が1割・2割・3割と違うの?」医療費の自己負担割合のよくある疑問5選を薬剤師が解説
「親が75歳になったら医療費が1割になると聞いていたのに、窓口で2割と言われた」「退職して収入が減ったのになぜか3割のまま」——Q&Aサイトや薬局の窓口でこうした声をよく耳にします。同じ保険証を持っていても、年齢や所得によって自己負担割合が異なる仕組みは、意外と知られていません。今回は、一般の方がよく検索・質問している自己負担割合に関する疑問を5つ取り上げ、薬剤師の立場から解説します。
- 自己負担割合(1割・2割・3割)がなぜ人によって違うのか
- 子どもの医療費負担の考え方
- 70歳・75歳で負担割合が変わるしくみと後期高齢者の2割負担
- 「現役並み所得」に該当すると高齢でも3割になる理由
- 自己負担割合は毎年見直される可能性があること
よくある疑問①:そもそも自己負担割合はなぜ1割・2割・3割と違うの?
日本の公的医療保険は、国民全員が保険料を出し合い、必要な医療費を支え合う制度です。医療機関にかかったとき、かかった費用のすべてを自己負担するわけではなく、保険給付として大部分が賄われます。残りの一定割合が窓口負担となります。
自己負担割合は年齢と所得区分によって決まります。基本的な考え方は次のとおりです。
| 対象者 | 原則の自己負担割合 |
|---|---|
| 未就学児(義務教育就学前) | 2割 |
| 6歳以上〜70歳未満 | 3割 |
| 70歳以上〜75歳未満 | 2割(現役並み所得者は3割) |
| 75歳以上(後期高齢者医療制度) | 1割(一定所得以上は2割、現役並みは3割) |
多くの会社員や自営業者が加入する公的医療保険では、6歳以降70歳未満は3割が基本です。「若いのに3割、高齢になると下がる」というのは、現役世代が医療費を主に支え、高齢者を保護する社会保険の設計によるものです。
よくある疑問②:子どもは2割?それとも無料になるの?
公的医療保険制度上、義務教育就学前(6歳の誕生日が属する年度の3月末まで)の子どもの自己負担割合は2割と定められています。しかし、多くの方が「子どもの医療費は無料(または少額)」という経験をしているのは、各都道府県・市区町村が独自に「子ども医療費助成制度」を設けているためです。
- 保険制度上の自己負担は2割
- さらに各自治体の助成で実質0円〜少額になることが多い
助成の対象年齢・所得制限・自己負担額は自治体ごとに大きく異なります。引越しをすると条件が変わる場合があるので要確認。
小学校入学以降(6歳以上)の子どもは制度上は3割負担になりますが、独自の助成制度を持つ自治体では高校生・18歳まで対象としているケースも増えています。お住まいの市区町村の窓口で確認することをお勧めします。
よくある疑問③:75歳になったら1割になるって本当?「後期高齢者の2割負担」ってどういうこと?
75歳以上になると「後期高齢者医療制度」という独立した医療保険に移行し、多くの方で自己負担割合が1割になります。ただし、2022年10月から一定以上の所得がある後期高齢者は2割になるルールが導入されました。これがQ&Aサイトでも多く見かける混乱の原因のひとつです。
※判定基準は同一世帯の後期高齢者全員の収入を合算して計算します。詳細は後期高齢者医療広域連合や市区町村窓口にご確認ください。
「75歳になったから当然1割」と思っていたところ、収入が一定額以上あるため2割になっていたというケースが多く見受けられます。保険者から届く「負担割合証」や保険証に記載されている割合を確認することが大切です。
よくある疑問④:「現役並み所得者」だと高齢でも3割なの?
70歳以上の方でも、「現役並み所得」に該当すると3割負担になります。これは「高齢だから医療費が安くなる」と思っていた方にとって意外に感じる点です。現役並み所得とは、ざっくり言うと現役世代と同程度の課税所得がある方を指します。
- 70〜74歳:課税所得145万円以上(同一世帯の70歳以上全員が145万円未満なら2割)
- 75歳以上(後期高齢者):課税所得145万円以上
※年収基準も設けられており、条件は細かいため、正確な判定は市区町村や後期高齢者医療広域連合窓口にご確認ください。
「定年退職して年金生活になったのに3割のままだ」という場合、退職前の収入が高かったため現役並み所得に認定されている可能性があります。収入が大きく変わった場合は「収入申告」を行うことで翌年度以降の判定に反映されることがあります。
よくある疑問⑤:自己負担割合は毎年変わることがある?急に増えたのはなぜ?
自己負担割合は、毎年度(8月〜翌7月)の住民税課税所得をもとに判定・更新されます。そのため、収入が変わったり、世帯構成が変わったりすると、負担割合が切り替わることがあります。よく見かけるケースをいくつか整理します。
- 定年退職後も翌年度まで3割が続く:前年の収入が高かったため、退職翌年度まで現役並み所得に該当することがある
- 子どもが独立して世帯構成が変わった:夫婦のみ世帯になると収入基準の適用方法が変わる場合がある
- 配偶者が亡くなって単身になった:世帯合算から個人判定に変わり、負担割合が変わることがある
- 副業・不動産収入が増えた年:確定申告の課税所得が増加した翌年度から負担割合が上がる可能性
70歳以上の方には「高齢受給者証」(または後期高齢者医療被保険者証)が交付され、負担割合が記載されています。毎年8月に更新されるため、8月以降に医療機関を受診する際は新しい証を持参しましょう。
まとめと相談の目安
- 自己負担割合は年齢と所得区分によって決まり、1割・2割・3割の3段階がある
- 75歳以上は原則1割だが、一定所得以上は2割、現役並み所得者は3割になる(2022年改正)
- 毎年8月に更新されるため、収入・世帯構成の変化で翌年度から割合が変わることがある
- 「急に割合が上がった」と感じたら、保険者(健康保険組合・市区町村)に問い合わせを
- 高額療養費制度で月ごとの自己負担には上限があるため、割合が上がっても青天井にはならない
「保険証を提示したのに、なぜ領収書の割合が違う?」という声が薬局でも時々あります。薬局での支払いも医療機関と同じく保険証・高齢受給者証等に記載の割合が適用されます。不明な点はお薬の窓口でもご相談いただけます。自己負担割合そのものの変更手続きは保険者や市区町村の窓口が担当です。